こんにちは!NOPPO MUSIC SCHOOLです!
私たちが声を出すとき、あるいは飲み込むとき、無意識に働いている筋肉がいくつもあります。
その中でも、発声を語る上で見落とされがちなのが「舌骨筋群」です。
そもそも、初めて聞いたという方も多いと思います。
実はこの「舌骨筋群」も、発声するうえで欠かせない要素なのです。
普段のボイストレーニングおいて一つこのことを意識しておくと、効果が何倍にもなります!!
本コラムでは、舌骨筋の解剖学的な構造から、その役割、発声や歌唱における重要性、さらには日常でのトレーニング方法を徹底解説していきます!
このコラムが、あなたにとって新しい気付きになれれば、幸いです。
それでは、参りましょう!

「舌骨」と「舌骨筋群」って何?
舌骨とは何か
舌骨は首の中央、下顎の奥から喉頭の上にかけて位置するU字型の小さな骨です。
分かりやすい形だと、のどぼとけの上にある小さな骨です。
他の骨と直接つながらず、周囲の筋肉と靭帯によって支えられており、舌や喉頭の動きを自由にコントロールするための「支点」の役割を果たします。
この浮遊する構造は人間の発声に大きな自由度を与えており、言語や歌唱が発達した背景にも関わっていると考えられます。
舌骨筋群って何?
舌骨筋は、首の中央に位置する小さな「舌骨(ぜっこつ)」という骨と関わる筋肉群の総称です。
舌骨筋は、歌声や発声の安定だけでなく、嚥下(飲み込み)、呼吸の補助、さらに首や顎の動きとも密接に関わります。
舌骨筋群の分類
舌骨筋群は大きく2つに分けられます。
1. 舌骨上筋群
舌骨の「上」に位置し、舌骨を引き上げたり、下顎を引き下げる働きを担います。
この部分に過緊張があると、下顎を後方に常に引っ張る力が加わり、下あごが前方に成長しにくい傾向があります。
- 〇顎舌骨筋(がくぜっこつきん)
舌骨を引き上げる動きをサポートする - 〇顎二腹筋(がくにふくきん)
下顎を下げる動きや舌骨を引き下げる動きを助ける。 - 〇茎突舌骨筋(けいとつぜっこつきん)
舌骨を引き上げる - 〇オトガイ舌骨筋(おとがいぜっこつきん)
下顎骨を後下方に引き下げる
2. 舌骨下筋群
舌骨の「下」に位置し、舌骨や喉頭を下方へ引き下げる作用を持ちます。
この部分に過緊張があると、間接的に下あごが下方に下げられ、顔が長くなったり、開咬(奥歯をかみ合わせた時、前歯同士がかみ合わなくなる状態)など、歯列不正が起こります。
- 〇胸骨舌骨筋(きょうこつぜっこつきん)
舌骨を下方に引き下げる。 - 〇胸骨甲状筋(きょうこつこうじょうきん)
甲状軟骨を下方へ引き下げる。 - 〇甲状舌骨筋(こうじょうぜっこつきん)
舌骨を下方へ引き下げるほか、舌骨が固定された状態では甲状軟骨を引き上げる働きも行う。 - 〇肩甲舌骨筋(けんこうぜっこつきん)
舌骨を後下方へ引き下げる。
この上下の筋群がそれぞれかみ合いながら、舌骨や喉頭の位置を細やかに調整し、嚥下や発声、発語を行っています。
より「舌骨」、「舌骨筋群」について理解したい方はこちら!「舌骨」と「舌骨筋群」を意識する理由は?
声帯の動きに直結する「輪状甲状筋(引き下げ筋)や甲状披裂筋(声帯を閉じる力を調節する筋肉)」と違い、「舌骨」と「舌骨筋群」は、「リラックス」することが重要だとされています。
これらの筋肉は複雑に使用され、局所的に使うよりも支え合いながら発声を助けています。
なので、これらの筋肉を理解し、声が出しづらい、高音が苦しいなどの原因の一つとしてピックアップしてあげる必要があるのです。

舌骨筋群の基本的な役割は?
発声における役割
舌骨筋群は喉頭の上下運動をコントロールし、声帯の緊張や共鳴腔の形に影響を与えます。
- ・舌骨上筋群が働くと、喉頭が持ち上がり、声が明るく高音寄りになります。
- ・舌骨下筋群が働くと、喉頭が下がり、声に深みや低音的な響きが加わります。
つまり、舌骨筋のバランス次第で声色は大きく変化します。
クラシック歌唱では喉頭を下げることで豊かな響きを得ることが多く、ポップスやミュージカルでは喉頭を柔軟に上下させて表現力を高めます。
これらは、基本的にリラックスし自然に使うことができていることが理想的です。
逆に過度に緊張していると、発声に齟齬が生まれます。
嚥下における役割
飲み込むときには、舌骨上筋群が舌骨を引き上げ、同時に喉頭も持ち上がります。
これにより食べ物や水分が気管に入らないように声門が閉じ、食道に送り込まれるのです。
舌骨筋の協調運動が失敗すると「むせる」現象が起きます。
呼吸や姿勢への関わり
舌骨筋は首の安定や呼吸補助にも関与しています。
胸骨舌骨筋や肩甲舌骨筋は胸郭の動きと連動し、深呼吸や発声の持久力を支えるのです。
そのため舌骨筋群は、発声だけでなく全身の安定にも密接に関わっています。

舌骨筋群と歌唱の関係は?
喉頭の位置と声質の関係
歌手が「喉を開く」と言うとき、その一部は舌骨下筋群の働きを指しています。
舌骨下筋群が働くと、喉頭を下げ咽頭腔が広がり、倍音が豊かで重厚な声が生まれます。
また、声帯を引き下げる動きにもつながるので、高音が出やすくなります。
また、「ミックスボイス」の取得には、舌骨上筋群への認識は不可欠と言われます。
舌骨上筋群は喉頭の位置を安定させ、声帯の振動がスムーズになるようサポートします。
よって、ポップスに適した、繊細な音使いが実践できるのです。
これらを複合的に使い、歌手はそれぞれのジャンルや楽曲に対しアプローチしているのです。
発声を行う上で、「喉頭」は大きく影響します。
喉頭は、「舌骨につるされている状態」で位置しています。
なので、舌骨の移動は喉頭にも大きく影響を与えます。
つまり、舌骨筋を自由にコントロールできるかどうかが、ジャンルごとの表現力に直結するのです。
舌骨筋と音域の広がり
高音を出すときに喉頭が過度に上がりすぎると、声帯に余計な力がかかり苦しくなります。
舌骨下筋群を適度に使って喉頭の上昇を抑えることで、高音域でも安定した発声が可能になります。
逆に低音では舌骨上筋群を補助的に使い、声の沈み込みすぎを防ぎます。
低音を出そうとするとき、舌を飲んでしまい声道(気道)を圧迫してしまう方もいます。
この時、舌骨上筋群を利用し、舌が奥に飲みすぎないように働きかけます。
より「舌骨」、「舌骨筋群」について理解したい方はこちら!舌骨筋の過緊張と声のトラブル
舌骨筋群を考えるうえで、最も大切なことは、これらを「リラックス」して使えていることです。
普段のボイストレーニングにおいて、これらが過緊張の状態であると、せっかく時間をかけていても中々アプローチできません。
また、歌いすぎや誤った練習で舌骨筋群が硬直すると、首回りが張って声が出しにくくなります。
顎を引きすぎたり、力んで歌う癖がある人は要注意です。
発声障害の一部は、舌骨筋群のバランス不良に起因しているとも言われます。
この時には、舌骨筋群の脱力を目指し、練習するのが望ましいです。

日常生活での舌骨筋ケア
- 温める:ホットタオルを首の前に当てると血流が改善し、筋緊張が和らぎます。
- マッサージ:顎の下から首の中央にかけて優しくなでるように触れると、舌骨筋群のリラックスに役立ちます。
- 水分補給:喉の乾燥は筋肉の疲労を助長するため、こまめな水分補給が重要です。
歌う人に限らず、話し声をよく使う教師や接客業の方にとっても舌骨筋のケアは大切です。
ぜひ、ボイストレーニングを始める前、後に実践してみましょう!
舌骨筋を意識したトレーニング!!
1. ハミング練習
軽く口を閉じてハミングすると、舌骨上筋群が働きつつ喉頭の安定感が得られます。
息の流れを感じながら、無理なく持続する練習がおすすめです。
2. 首・顎のストレッチ
- 首を左右にゆっくり倒す
- 下顎を軽く突き出して戻す
- 舌を大きく出して上下左右に動かす
これらは舌骨筋群の緊張を解き、柔軟性を高めます。
3. リップロール・タングトリル
リップロールや「巻き舌」の練習は、舌骨筋を含む発声筋群のバランスを整え、余計な力を抜く効果があります。
喉頭を硬直させずに音程を滑らかに行き来する練習として有効です。
4. 発声と姿勢の連動練習
正しい姿勢(首が前に出すぎず、胸郭が自然に開いた状態)で発声すると、舌骨筋の過剰な働きを防ぎます。
特にデスクワークで猫背になりがちな人は、歌唱前に背伸びや肩回しを取り入れると効果的です。

舌骨筋群を理解し、自由な歌声を!
「舌骨筋群」は、小さな骨「舌骨」を支点にして喉頭や舌を巧みにコントロールする、発声・嚥下・呼吸に不可欠な筋肉です。
特に歌唱においては、喉頭の位置や共鳴腔の広さを調整し、声質や音域に大きな影響を与えます。
舌骨筋がしなやかに働けば、声は自由に、のびやかに響きます。
逆に緊張や偏った使い方をすれば、声のトラブルや発声困難を招きます。
日々のトレーニングやケアを通じて舌骨筋を整えることは、歌う人にとってだけでなく、すべての人にとって「声をよりよく使う」ための大切な習慣です。
声は心と体をつなぐ表現の源です。舌骨筋を意識することは、あなた自身の声の可能性を広げる第一歩になるでしょう。
ぜひ、意識を置きながら、実践してみて下さい!
良い歌ライフを!
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