「もっと高い声が出せたら…」
「低い声を響かせたいけど、喉が閉まってしまう…」
歌を練習していて、一度はそんな悩みにぶつかったことがあるのではないでしょうか?
音域を広げることは、歌唱力を高めるうえで非常に大切な要素です。
しかし、やみくもに練習しても声を壊してしまったり、なかなか成果が出なかったりすることも少なくありません。
このコラムでは、音域を広げるための仕組み・考え方・トレーニング法を、ボイストレーナー視点で丁寧に解説していきます。
正しい知識を身につけて、あなたの「声の地図」を広げていきましょう!

音域とは何か?
「音域」とは何か、見ていきましょう。
音域とは「出せる音の幅」
音域とは、「人が無理なく発声できる最低音から最高音までの範囲」を指します。
ピアノの鍵盤で表せば、たとえば「低いド(C3)」から「高いソ(G5)」まで出せる人の音域は、約2オクターブ半になります。
この範囲が広いほど、歌える曲の幅も広がり、表現力も豊かになります。
男性と女性の音域の違い
男性と女性においても、音域に違いがあります。
これは、幼少期はそこまで男女に差はないのですが、変声期を迎えた後だと、はっきり分かれてきます。
基本的には、男性は低い音域になり、女性は高い音域をキープします。
女性でも、音域が低くなる場合もあるので、個人によって様々とも言えます。
平均的なそれぞれの音域は、
男性:G2~G4
女性:G3~C5
となります。
これは、必ずしも全員に当たるものではなく、個人差がありますので、ピアノ等を使って音域を確認しながら自分の音域と比較すると、自分の得意な音域が平均と比べてどうなのかを把握することができます。
自分が低音が得意なのか、または高音か、はたまた中間の音なのか。
知っておくと、練習の目標が立てやすいかと思います。
「出せる」と「出せるけど無理してる」は違う
重要なのは、「無理なく」出せる音という点。
「かろうじて出た」高音や、「喉が詰まるような」低音は、本来の音域とは言えません。
喉を痛めず、息の流れや声帯の振動が自然な状態で出せる音が、あなたの正確な音域です。
すぐ音域を広げたい方はこちら!!音域が広がると得られるメリット
音域が広がることで、歌唱表現は格段に豊かになります。
難易度の高い楽曲にも挑戦できる
近年は特に、音域の広い楽曲が増えています。
それらを歌いこなすためにも、広い音域を扱えることが必須になっていきます。
広い音域の楽曲例
・僕のこと/Mrs. GREEN APPLE
音域:C3~G5
・Subtitle/Official髭男dism
音域:A#3~C#5
感情表現のバリエーションが増える
音域が広がることで、声帯を柔軟に扱うことができ、感情をより多彩に表現することができます。
また、エッジボイスなど特殊な発声方法にも繋げることができます。
単に「高い声が出る」ことだけがゴールではありません。
広がった音域をどう活かすかが、歌の魅力に繋がります。
音域が広がる仕組み
「音域は生まれつきのもの」と思っていませんか?
もちろん先天的な特徴もありますが、多くの場合、正しい練習で音域は広げることができます。
声帯の振動数と音の高さ
音の高さは、声帯が振動するスピード(周波数)で決まります。
• 高音:声帯が「薄く・速く」振動
• 低音:声帯が「厚く・ゆっくり」振動
つまり、音域を広げるには、声帯が柔軟に動けるようにトレーニングする必要があります。
共鳴と姿勢もカギ
音の響きや抜け感に大きく関わるのが、「共鳴」と「姿勢」です。
• 高音を出すには、喉の奥が開いて頭の方まで響かせる感覚(ヘッドボイス)が重要。
• 低音は、胸や腹部に共鳴させる意識(チェストボイス)が求められます。
どちらも、正しい姿勢と呼吸が基礎になります。

音域を広げる方法
ここでは、音域を広げる方法を、いくつかのテクニックに分けてお伝えします。
1つ1つチェックしながら、取り組んでいきましょう!
腹式呼吸で、自由自在は発声を!
声を出す上で欠かせないものが、「呼吸」です。
声帯は、息が通ることで振動し、その振動が声となって聞こえています。
すなわち、幅広い音域を出すためにも、息を自在にコントロールできていることは必要不可欠なのです。
腹式呼吸は、胸の筋肉を使って肺を動かし呼吸する胸式呼吸に対して、「横隔膜」という器官を使って息をコントロールする呼吸法です。
横隔膜は胸と腹部の中間に位置するので、腹筋や背中の筋肉を利用して動かしています。
普段の生活では、どうしても呼吸は浅くなりがち。
胸式呼吸を多用してしまうのです。
すると、声帯を十分に振動させることは出来ず、出したい音も中々出てきません。
そこで、より肺を稼働させるために、腹式も並行して使うことが音域を広げるために必要なのです。
声帯周りの筋肉を利用しよう!
歌唱する際、人は声帯の動きによって音程を変化させています。
基本的に、高い声を出そうとするときは引き伸ばされ薄くなり、低い声を出そうとするときは緩み厚みを持たせようとします。
しかし、これらの動きは直視で確認できるものではありません。
ここで必要なのが、感覚的に声帯の動きをコントロールすることなのです。
この声帯の動きを促しているのが、「声帯周りの筋肉」なのです。
基本的には、以下の筋肉にて声帯を動かしています。
・声帯を閉じる筋肉:甲状披裂筋
・声帯を引き下げる筋肉:輪状甲状筋、輪状咽頭筋
・声帯を引き上げる筋肉:口蓋咽頭筋、茎突咽頭筋
これらの筋肉を利用し、歌声の音高や音量を調整しています。
目に見える部分ではないので、感覚的にそれぞれの筋肉の使い方を習得していくことが、音域を広げることができる1つのコツです!
すぐ音域を広げたい方はこちら!!やってみよう! Let`sボイストレーニング!
それでは、実際に音域を広げるための練習方法を紹介します。
以下は毎日のトレーニングに取り入れやすいメニューです。
1. 腹式呼吸を身に付けよう!ブレストレーニング
呼吸が不安定だと、声帯も安定して振動できません。
まずは「腹式呼吸」をしっかり身につけましょう。
やり方
1. お腹を使って深く吸う
2. 「スー」と息だけで、一定の強さで20秒出し続ける
3. 息が途切れないよう集中して繰り返す
この練習で横隔膜を動かす感覚を覚えることで、安定した呼気が出せるようになります。
2. リップロール(唇を震わせる発声)
リップロールは、声帯と呼吸のバランスを整える万能トレーニングです。
やり方
1. 唇を閉じ気味にして「ブルルル…」と震わせる
2. ピアノに合わせて、ドレミファソファミレド(5音)を上下に繰り返す
3. 高音でも喉が締まらないように注意
リップロールは、無理なく高音にアプローチするのに効果的です。
3. ミックスボイス強化
音域を広げるうえで欠かせないのが「ミックスボイス」の習得です。
ミックスボイスとは、地声と裏声の中間のような声。
これを身につけると、高音がラクに出せるようになります。
やり方
1. 口を軽く閉じて「んーげー(NG音)」を出す
2. ドから高音へ、サイレンのように「んーげー」と音を上げる
3. 声がひっくり返らないよう、息の圧と共鳴をコントロール
4. 裏声(ファルセット)で音域を伸ばす
裏声を鍛えることで、高音域の声帯の可動域が広がります。
やり方
1. ファルセットでドレミファソ〜と5音スケールを歌う
2. 音程を徐々に上げていき、無理のない高音に慣れていく
3. 喉を開き、息の流れを感じながら歌う
この練習を重ねることで、高音の限界が少しずつ上がっていきます。
5. 低音域の強化トレーニング
高音だけでなく、低音もコントロールできるようになると、音域の「下」も広がります。
やり方
1. 声を胸に響かせる意識で「うー」と低く出す
2. 胸に手を当てて、振動が伝わるか確認
3. 音程を少しずつ下げながらキープ
特に男性や低音に苦手意識がある方にはおすすめです。

よくある質問
音域は、誰でも広げられるもの?
基本的には、適切なトレーニングを重ねることで、可能と考えられています。
しかし、そこにはその人に合ったアプローチやトレーニングが必要です。
合わない練習を無理にしてしまうと、逆効果もあり得ます。
ボイストレーニングなどを利用しながら、自分の声のベストパフォーマンスを見つけていきましょう!
また、声帯ポリープなど、疾患が原因で音域が広がらない場合もあります。
声を出す際に違和感などある場合は、耳鼻咽喉科にて診てもらうと良いでしょう。
焦らず、一つずつ確認しながら行うことも、音域を広げるコツの一つです。
練習していたら、喉が痛くなってきた・・・。これって大丈夫?
「1日で高音が出るようにしたい!」
そんな気持ちもわかりますが、喉の筋肉や声帯は繊細です。
痛みや違和感を感じたら、すぐに練習を中止してください。
音域の拡張は「筋トレ」と同じ。
地道に積み重ねていくものです。
音域が広がれば、音程も合ってくる?
練習の過程において、音感も同時に鍛えられることは少なくありません。
音域が広がるということは、声帯を柔軟に扱うことができている証拠でもあります。
よって、自然と音も合ってくるのです。
しかし、広い音域が出せることと音を合わせる事は別の技術でもあるので、高い音や低い音が出ても音程が合わないこともしばしばあります。
高音・低音に入ったときでもピッチを正確に保つために、ピアノやチューナーでの確認するなど、音を合わせることを習慣化しましょう。
あの人みたいに歌いたい!異性の歌手でも可能?
歌は、男性ボーカル、女性ボーカルが歌うかによって大きく変わります。
キーは勿論ですが、声質や雰囲気など・・・。
同じ楽曲であったとしても、印象がガラッと変わります。
自分にないポテンシャルの歌手の歌を聴いたりすると、
「あの人みたいに歌ってみたい!」
と考えること、あると思います。
このアンサーとしては、「練習次第で、近づけることは出来る!!」です。
まず、「音域」という部分については、理論上歌唱における部分では疾患などがない限り、練習次第で上にも下にも広げることができます。
「音として発する。」
ここに特化すれば、無理なく自分に合った練習を行う事で、キーが広がるでしょう。
「声質」
これについては、先天的なものが大きいので、正直「音域」よりもハードルが高い部分があります。
声質は元々の声帯の大きさや形、体格、そして使い方によって変化します。
そこに骨格などによる「共鳴」が関わってきますので、100人いれば、100人それぞれの声があると思っても過言ではありません。
ですから、「完璧に同じ声になる!」というのは中々無理があるというわけです。
しかし、モノマネ芸人の方など、その道のプロもいます。
彼らは自身の声帯の使い方を研究し、音を本物に限りなく寄せているのです。
近づける部分については、練習次第で実践できます。
しかしそこには、音を聞き分けられる耳と、自分の声帯を自在に使う訓練が必須です。
近い声質なら感覚的に出来たりしますが、離れたパーソナルのものなら一朝一夕では中々実現が難しいです。
これにより、「喉を壊した」という人も少なからずいますので、注意が必要です。
また、歌唱を寄せるなら、「歌いまわし」の真似から始めてみるのが効果的です。
音域がのび、原曲キーで歌えるようになったら、「その人がどういったリズムで歌っているのか。息の吸い方はどうか。どんな発語で歌っているのか」を研究してみましょう。
その人の癖をキャッチするだけでも、声質は違っても歌声を寄せることができるのです。
多くのモノマネが得意な方は、その人の「節」から研究されるとのことです。
これは、ただ寄せるだけではなく、自分自身の歌唱にもとても効果があります。
色々な「歌いまわし」を知るということは、それだけ表現の引き出しが増えるということです。
憧れの人に近づくことができたら、改めて「自分だけの歌い方」も研究することも、面白いかもしれませんね!!

音域を広げる事は、あなた自身の可能性を広げること
音域を広げるためには、声の仕組みを理解し、継続的なトレーニングが必要です。
今日明日では結果が出ないかもしれません。
でも、正しく努力を続ければ、確実にあなたの声は変わります。
声は楽器。
あなたの体の中にある、世界に一つだけの楽器です。
ぜひ、その可能性を信じて、日々のトレーニングに取り組んでみてください。
良い歌ライフを!
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