ロックやメタル、ハードコアといったジャンルを歌うときに欠かせない要素のひとつが「シャウト」です。
観客の心を揺さぶるようなパワフルな叫び声は、楽曲にエネルギーを与え、感情を直接ぶつけるような表現を可能にします。
最近はポップスでも、シャウトをテクニックとして表現の一つに落とし込んでいるアーティストも増えています。
しかし「力いっぱい叫べばいい」と思って声を出すと、すぐに喉を痛めてしまうのも事実です。
正しい知識を持たずに練習を続ければ、声帯結節やポリープなどの深刻なトラブルを招く可能性すらあります。
このコラムでは、シャウトの仕組みから実践的な出し方、トレーニング方法、安全に続けるための注意点までを詳しく解説していきます!!
このコラムが、あなたの歌をより楽しくするきっかけになれれば幸いです。
では、参りましょう!!

シャウトとは何か
一般的に「シャウト」とは、大声を張り上げることだと思われがちですが、音楽におけるシャウトはもっと繊細でテクニカルな発声です。
特徴をまとめると、以下のようになります。
• 声帯を強く閉じすぎず、摩擦音や倍音を含んだノイズを作り出す
• 息の勢いを利用して声を前に飛ばす
• 声帯だけでなく、咽頭・鼻腔・口腔といった共鳴腔を活かす
• 長時間続けても喉を壊さない「コントロールされた叫び」
つまり「声を荒らげる」ではなく、「荒々しく聞こえる声を安全に作る」技術こそがシャウトなのです。
声の仕組みとシャウトの関係
シャウトを理解するために、まず発声の基本を整理しておきましょう。
声帯とその周辺筋
声は声帯が振動することで生まれます。
シャウトでは、声帯を強く擦り合わせるのではなく、閉じきらずに摩擦を起こす状態が重要です。
ここで働く主な筋肉は以下の通りです。
• 甲状披裂筋:声帯を厚くして地声的な響きを作る
• 輪状甲状筋:声帯を引き伸ばして高音を作る
• 外側輪状披裂筋・後輪状披裂筋:声門閉鎖の度合いをコントロール
シャウトでは「完全閉鎖」ではなく「半開きで息を混ぜる」状態を作るため、これらの筋肉のバランスが非常に大切です。
強い息を一気にぶつけると声帯はダメージを負いやすいです。
シャウトにおいては、腹式呼吸でコントロールされた空気を送り、鼻腔や咽頭で響きを作ることで「叫んでいるように聞こえる声」を実現します。
今すぐシャウトを出したい方はこちら!シャウトの種類・出し方
一口に「シャウト」といっても、音楽ジャンルや歌手によって使い方が異なります。
代表的なものを整理しましょう。
1. フォールスコードスクリーム(低音系シャウト)
地の底から響くような重低音。
地声で発声し、仮声帯(空気の吐く量を調節する器官)を使って低音を歪ませます。
種類:グロウル、ガラテル、ピッグスクールなど
デスメタルやハードコアでおなじみの発声です。
2.フライスクリーム
ファルセット、ミックスボイスで発声する高音の叫びです。
仮声帯やエッジの部分を震わせることで、独特のかすれ声を作ります。
上手く発声できれば、長時間の持続が可能で、負担も比較的少ないとされています。
パンクロックやハードロックにて多く使用されます。
3.がなり声
音域に関わらず、ガラガラとしたエッジのある声で歌う方法です。
仮声帯を震わせることで生まれる、渋みと迫力のある声が特徴です。
ポップスやR&B、ブルースによく使われます。
これらはいずれも「ただ叫ぶ」ではなく、声帯に過度な負担をかけずに音色をデザインする技術と言えます。
また、ジャンルで分けられているわけではなく、楽曲や表現によって使い分けられます。
得意なシャウトが見つかったら、様々な音色と使い分けるように練習してみましょう!

シャウトを出す前に!基本ステップを紹介
1. 呼吸の準備
シャウトは呼吸がすべての土台です。
胸式ではなく腹式呼吸を意識しましょう。
お腹を風船のように膨らませ、下腹部からゆっくり息を押し出す感覚を身につけることが第一歩です。
腹式呼吸トレーニング! ・姿勢を真っすぐにし、足を肩幅に開きます。 ・脇腹に手を当てて、手の力を押し返すようにお腹を膨らませます。 ・脱力しながら、お腹をゆっくりへこませるようにして息を吐いていきます。(10秒ほどかけてゆっくり吐くと効果的!) 以上の工程を繰り返していきます。2. エッジボイスから練習
声帯を最小限に振動させて「ギリギリ鳴っている声」を出すエッジボイスは、シャウトの基礎になります。
「ア゛ー」「グ゛ー」と低くかすれた声を出すことで、声帯を柔軟に使う感覚を養えます。
胸に手を当て、振動(共振)を感じながら行うと効果的!
息が詰まらないように、脱力と舌の位置に注意しながら行いましょう。
※舌先を前歯の裏につけた状態をキープ!
慣れてきたら、「ア」、「エ」、「イ」、「オ」、「ウ」と母音を変えて発声してみましょう!
母音が変わっても音色が大きく変わらないように意識して行いましょう!
3. リップロール・ハミング
リップロール(唇をブルブルさせる)やハミングで息と声をコントロールする練習をしましょう。
リップロールのやり方 ・口を閉じ、唇を震わせるようにしてゆっくり息を吐きます。 ※うまく震えないときは、指で口の両端を引っ張るようにして、唇が軽く張っている状態を作って行ってみましょう。 ・慣れてきたら、声を出していきます。 ・音程を付けたり、低音から高音へと上下してみましょう。 ・リップロールの状態で歌ってみるのも、コントロールには効果的です! ハミングも同様、音程を付けたり低音と高音を上下しましょう。地声と裏声を行き来するのもよい練習になります!息の勢いと声帯のバランスが取れていないと、シャウトはすぐに詰まってしまいます。
4. 小さな音量からトライ
いきなり大音量で練習するのは、喉を痛めしまう可能性があるので危険です。
まずは小さな声で摩擦を作り、少しずつ息を強めて音量を上げていくことが大切です。
レッツ!シャウトトレーニング方法
ここでは、シャウトを出すためのトレーニング方法を解説します!
種類別に分けてご紹介しますので、1つずつ取り組んでみましょう!
1. ため息で、まず仮声帯を震わせる練習
息8割、声2割のイメージで、「ハァ~」と音を出します。
喉のガラつき感が音に出てきたら、声の割合を少しずつ増やしていきます。
この時、喉を痛めないようにあくびのイメージで喉を開きます。(のどぼとけが下がるイメージ)
「この時点で、「がなり声」は出来ています!
リラックスしながら歪んだ声が出てきたら、うまくいっているサインです!
2. フライスクリームのステップアップ
低いエッジボイスをだします。
そこに息を足していき、歪みを強くしていきます。
ファルセットで「イヤー!!」と張っていきます。
力んで張るよりも、段々強くしていくイメージです。
裏声でエッジボイスを出して行うと、声門閉鎖をある程度キープしたままハイトーンを出すことができます。
息の圧力を強めすぎると、圧力の関係で声門閉鎖が弱くなってしまうので、息の量に注意しましょう。
3. フォールスコードスクリームのステップアップ
ため息でがなり声を作り、仮声帯を震わせます。
そのまま「ウ」の口で唸るように伸ばします。
その声に、少しずつ声を伸ばしていきます。
この時、舌が奥に飲み込み安いので、舌先を軽く前歯の裏に当て、舌根が奥に飲み込まないように注意しましょう。
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喉を守るための注意点
シャウトの練習は、間違えて行うと喉を痛めやすい物でもあります。
自信の喉に細かく注意を置き、ケアしながら練習しましょう。
痛みを感じたら即ストップ
シャウトは、喉に負担をかけずに行うものです。
痛みは間違った使い方のサインです。
痛みに気づいたら、練習をストップし喉を休めましょう。
水分補給をこまめに
乾燥した状態でシャウトすると声帯が傷つきやすいので、常に潤いを保ちましょう。
風邪や疾患による喉の不快感がある時も練習はおススメできません。
ウォームアップとクールダウンを忘れない
練習前にはリップロールや軽いハミングで声帯を温め、練習後は柔らかい声や裏声でクールダウンします。
起きていきなり出すなど、負担のかかる行為は控えましょう。
毎日少しずつ積み重ねる
長時間の練習は禁物。
10分程度の短い練習を繰り返す方が安全です。
適度に行うことで、筋肉は適切に感覚を掴んでくれます。
焦らずに行っていきましょう。

まとめ
シャウトは「喉を壊さずに叫び声を音楽に変える技術」です。
• 腹式呼吸と共鳴の理解が土台
• 声帯を閉じすぎず、仮声帯による摩擦音を作る感覚が大切
• 小さな音量から始め、徐々に強化する
• 痛みや違和感を無視せず、必ずケアを行う
この積み重ねによって、力強くも自由自在にコントロールできるシャウトを身につけることができます。
あなたもぜひ、日々の練習に取り入れてみてください。
正しい方法で磨かれたシャウトは、必ず歌の大きな武器になるでしょう。
良い歌ライフを!!
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