こんにちは。
NOPPO MUSIC SCHOOLの
イラスト講師、ぷらたです。
視線誘導って何?
今回のイラストを例に「視線誘導」について解説していきます。
視線誘導とは、観る人の目が画面上を自然に移動し、描き手の意図した順序で情報を受け取る仕組みのことです。
商用イラスト、広告、漫画、ゲーム背景、どの分野においても必須の技術であり、受け手に「見てほしいポイント」を的確に伝える力に直結します。
第一印象と視線の入口
このイラストにおける視線誘導は、シンプルながら非常に効果的です。
流れを整理すると以下のようになります。
1.キャラクターの顔(入口)
イラストを一目見たとき、最初に視線が引き寄せられるのはキャラクターの「顔」、特に赤く強烈に輝く瞳です。
人は本能的に「高いコントラスト」や「色相の強い部分」に注目します。
背景が暗めの色調でまとめられている中、赤い瞳は圧倒的な視認性を持ち、視線の入口として機能しています。
この「入口をどこに設定するか」は視線誘導の最重要ポイントです。
もし瞳の色が背景と同化していたら、観る人は迷子になり、作品の魅力が半減してしまうでしょう。
瞳に引き込まれた視線は、次に口元や表情に移動します。
キャラクターが微笑む表情は、観る人に心理的な「次を見たい」という欲求を生み出します。
そしてその流れのまま、彼女の手元へ視線が滑ります。
手には鮮やかな紫の小瓶が握られており、これは瞳と同じく彩度の高い色を持つため「第2の注目点」として成立しています。
ここで「顔 → 手 → 小物」という導線が生まれ、観る人に「このキャラクターは何をしているのか?」という問いを意識させます。
2.左下のジュエリーボックス
キャラクターと小瓶に目が行った後、視線は周囲の装飾品や背景に広がります。
顔から自然に斜め左下へと視線が誘導され、ジュエリーボックスの金の装飾や開かれた引き出しの奥行きは、強い存在感を放ち、視線をしっかりとキャッチします。
ここで「このキャラクターが身につける装飾品」に意識が移ります。
3.右下の香水瓶群
ジュエリーボックスを見た後、視線は画面下部を横切るようにして右側の香水瓶へと流れます。
色とりどりのガラス瓶が光を反射し、画面に鮮やかなアクセントを加えています。
これにより「装飾品 → 香水」というラグジュアリーなテーマが補強されます。
左側のジュエリーボックスや右側のネックレススタンドは、縦横に並ぶラインによって視線を自然に移動させる構造になっています。
再び顔へ戻る循環
香水瓶を見た視線は、上方向へと戻り、再びキャラクターの顔へと循環します。
これにより「顔 → 小物 → 顔」という視線の三角形が成立し、観る人は長く画面を見続ける構造に導かれます。
さらに、背後の鏡に映る黒猫のシルエットも「視線の休憩ポイント」として作用しています。
キャラクターの正面に配置されたこの影は、直接的に目立つわけではないものの、物語性を暗示しつつ画面中央へと再度目を引き戻す役割を担っています。
ラインとリズムによる導線
このイラストでは、「曲線のリズム」も多岐に渡り使われています。
例えば、髪の流れから耳飾りへ、さらに小瓶の丸み、香水瓶のラインへと繋がる一連の曲線は、視線を淀みなく循環させる役割を果たします。
また、黒と金の装飾の繰り返しは「リズム効果」となり、観る人の目が画面の隅々まで散らばるのを防ぎつつ、主要部分へ戻っていくサイクルを形成します。
こうした「戻り道」があることで、イラストを長く見続けても飽きない構造が生まれるのです。
まとめ
このイラストにおける視線誘導は以下の流れで整理できます。
- ・赤い瞳(視線の入口)
- ・表情 → 手元 → 紫の小瓶(第2注目点)
- ・周囲の宝石や小物へ(情報の拡張)
- ・鏡の黒猫 → 背景 → 再びキャラクターへ(循環構造)
視線誘導を意識して描くことで、観る人は迷うことなく作品の核心にたどり着き、さらに世界観全体を楽しむことができます。
単に「綺麗に描く」だけではなく、「どの順番で見せたいか」を設計することが、商用イラストや人気作品における差別化の鍵となります。
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