歌を学んでいる人なら、一度は耳にしたことがある「声門閉鎖」という言葉
「高音が苦しい」
「息が漏れて弱々しい声になる」
「声がこもって響かない」
そんな悩みの裏側には、この声門閉鎖のバランスが大きく関わっています。
声門閉鎖とは、「声帯がしっかりと合わさって声を作る仕組み」のこと。
しかし、単に「閉じればよい」という単純なものではなく、声門閉鎖は 筋肉の精密な協調 によって成り立ち、歌唱の質や表現力を大きく左右します。
本コラムでは、声門閉鎖の仕組み、関わる筋肉、歌唱における利点、そしてトレーニング方法について徹底的に解説していきます。
あなたの表現のより良いブラッシュアップに繋がれば、幸いです。
では、参りましょう!

声門閉鎖とは何か?
声帯の基本構造
人間の声は、喉頭にある「声帯」の振動によって作られます。
声帯は左右2枚のひだのような組織で、普段は気道を開けるために離れています。
息を吐くときにこれらが閉じ、空気の圧力で振動することで「声」が生まれるのです。
声門閉鎖の定義
「声門」とは声帯の隙間のこと。
声門閉鎖とは、この隙間を 適切に閉じる 動きのことを指します。
• 強く閉じすぎる → 声が詰まって喉が苦しくなる
• 弱すぎる → 息漏れのある声になり、力強さを失う
この場合声門閉鎖を行う上で大切なのが、「バランスよく閉じる力を調整できている事」なのです。
ただ強すぎてはいけませんし、弱いと声になりません。
つまり声門閉鎖は、「息の効率」と「声のクオリティ」を決める、発声の根幹なのです。
声門閉鎖に関わる筋肉
これらを結ぶ筋肉が、声帯周りの筋肉として挙げられます。
ボイストレーニングでは、これらの筋肉を意識し鍛えることで、声のブラッシュアップへと発展させていきます!
1. 甲状披裂筋
甲状軟骨と披裂軟骨をつなぐ筋肉。
声帯の内側にあり、声帯を厚く・短くする役割を担います。
声門閉鎖においては、声帯同士をしっかりと接触させる働きがあり、地声感のある響きを生みます。
2. 外側輪状披裂筋(側筋)
声帯の後ろを内側に引き寄せ、声門を閉じる重要な筋肉。
3.披裂間筋
「横披裂筋」と「斜披裂筋」を合わせて称され、披裂軟骨を引き寄せ声門を閉じる働きをする筋肉。
この甲状披裂筋、外側輪状披裂筋、披裂間筋の働きをそれぞれ組み合わせ、声門閉鎖を促しています。
いずれかの筋肉が弱いと声門が閉じきれず、息漏れの声になりやすいです。
4. 輪状甲状筋
輪状軟骨と甲状軟骨をつなげる筋肉。
高音発声に関わる筋肉。
声帯を引き下げ、薄くさせることで音の振動数が多くなり、声は高くなります。
高音発声時、輪状甲状筋と甲状披裂筋のバランスが崩れると、声門閉鎖が不安定になります。
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歌唱における声門閉鎖のメリット
声門閉鎖を適切に行えると、歌唱は劇的に変わります。
その利点を具体的に見ていきましょう。
1. 息の効率が良くなる
声門がしっかり閉じると、息が無駄に漏れません。
その結果、少ない息でも響きが保たれ、長いフレーズも楽に歌えるようになります。
2. 声に芯が生まれる
閉鎖が不十分だと「息っぽい声」になりがちですが、適切な閉鎖は声に芯を与え、ホールで響く力を持たせます。
これは、声門閉鎖を強くしていくと、音の振幅が大きくなり、声量自体がアップするからです。
これに共鳴を加えると、より良く響かせることができます。
3. 音域が広がる
高音では声門が不安定になりやすいため、閉鎖が甘いと声が裏返ります。
音は振動数が多くなると、高くなります。
高い声を保つには、多い振動数を無理なくキープする必要があります。
息の量では負荷が大きくかかってしまうので、声帯を多い振動数を生み出せる状態に作ることが必要です。
正しく声門を閉じられると、高音でも力強く安定した声を出せます。
4. 表現力が増す
声門閉鎖の強弱をコントロールすることで、
• 息の混ざった柔らかな声
• 力強く押し出す声
• 透明感のある裏声
• 芯のあるハイトーン
など、多彩なニュアンスを表現できます。
これらを楽曲に合わせて使い分けられることが、表現力アップには必要です。

声門閉鎖を鍛えるトレーニング!!
では、声門閉鎖を鍛えるトレーニングを解説致します!
脱力をイメージしながら、適切に筋肉を鍛えていきましょう!
1. リップロール
唇をブルブル震わせながら声を出す練習。
息と声帯のバランスを整え、自然な閉鎖を促します。
表情筋のトレーニングにも効果的!
➀両手の人差し指で両側の方を引っ張りながら、唇を「ぷるぷるぷる・・・」と震わせるように息を吐いていく。
➁慣れてきたら、声を同時に出していく
➂スケール(ドレミファソラシド)に合わせ、リップロールをしながら音程を取っていく。
➃低音から高音へと、移動させていく。
力みなくできるようになれば、コツをつかめている証拠!
焦らずやっていきましょう!
4. エッジボイス
ごく少ない息で「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」と声帯を鳴らす練習。
自分の中で、一番低い音を出すイメージです。
閉鎖筋を目覚めさせ、必要最小限の閉鎖感を体感できます。
➀リラックスしながら、「あー」と声を出す。
➁ゆっくり音程を低くしていき、自分が出せる最低音まで持っていく。
➂息漏れのない、ガラガラした声に近づけていく。
➃息が切れるまで、ムラなく一定に声を出し続ける
胸に手を当て、「共振」(胸などの体に響くこと)ができているか確認しながら行うと効果的です。
力みがあると、エッジボイスはうまくいきません。
声帯がしっかり閉じられ、振動しているか確認しながら行いましょう。
5. い母音での発声
「い」の母音で、音階(スケール)で練習していきます。
「い」に母音は声門閉鎖を促しやすく、響きを実感しながら練習することができます。
➀「ド」の音から始め、同じ音で3回「い、い、い・・・」と発声していきます。
➁「ドレミファソラシド」と、1音ずつ上げて行きます。
➂慣れてきたら、5トーン(ドレミファソファミレド)で発声していきます。
この時、音が途切れないように繋げて発声していきましょう。
➃キーを上げていきます。苦しくなったら、無理のない高さで元の音に降りていきましょう。
音が濁ったり、苦しくなったりする場合は、声門閉鎖しすぎている状態なので、脱力を心掛け、一番響く感覚を身に付けていきます。
もし閉鎖が苦手な方は、鼻の下(人中)に声を当てるイメージ声で行ってみてください!!
声門閉鎖を実感しやすくなります!
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声門閉鎖をトレーニングする上での注意点
1.閉じすぎないこと
「閉鎖=力む」ではありません。
強く押さえるのではなく、自然に支えることが大切です。
2.息とバランスを取ること
声門閉鎖は「息の流れ」と一緒に成り立ちます。
息を止めるのではなく、流しながら閉じる感覚を意識しましょう。
3.少しずつ鍛えること
声帯は繊細な組織です。過度な練習は声帯炎やポリープの原因にもなります。
裏声を出そうとしたとき、普段は出るのにうまく発声できない場合など、あると思います。
この時、声帯炎やポリープの可能性が大きいです。
練習を控え、声帯を休ませましょう。

最後に
声門閉鎖は、歌声をコントロールするうえで欠かせない技術です。
声門閉鎖は「声を閉じる」だけでなく、「声を自由に解放する」ための基盤です。
ゆっくり意識していけば、必ず声にとって良い作用をもたらします。
ぜひ、普段のトレーニングに取り入れてみてください!
良い歌ライフを!
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