ボイトレの現場でよく聞く質問があります。
「肺活量を増やせば、歌は上手くなりますか?」
年齢を重ねると年々肺活量が少なくなり、呼吸がし辛い、そして歌い辛くなったという方もいるかと思います。
では、歌において肺活量はどのくらい影響するのでしょうか。
結論から言うと、“肺活量そのもの”よりも、呼吸の使い方とコントロールの方がはるかに重要です。
ではまず、「肺活量」とは何なのか。
そして歌において本当に必要な呼吸の仕組みとは何なのかを、解剖学的な視点も交えながら詳しく解説していきます。

肺活量とは?男女の平均
肺活量とは、最大限に息を吸い込み、そこから最大限に吐き出せる空気の総量のことです。
一般的な目安としては、
• 成人男性:約3,500〜4,500ml
• 成人女性:約2,500〜3,500ml
と言われています。
20代前半をピークに年々下がっていく傾向があり、タバコや疾患によって上記の数値よりも下回ってしまう場合もあります。
よって、
「年齢を重ねて肺活量が下がり、息苦しく感じる」
といったことが起きてしまうのです。
ただし、歌にとって大事なのは——
歌は「息をできるだけ多く吐き切る競技」ではないということです。
歌では一気に空気を吐くのではなく、
・必要な分だけ
・一定の圧力で
・安定して
送り続けることが求められます。
つまり重要なのは「量」よりも「制御」です。
歌に必要なのは“息の量”ではなく“息の圧”
声はどうやって出ているのでしょうか?
① 横隔膜が下がり、肺に空気が入る
② 吐くときに横隔膜が戻る
③ 空気が気管を通る
④ 声帯が振動する
声帯とは、声を出すための器官。
2枚のひだのような構造となっており、息が通ることで振動を始めます。
歌では、この振動を上手く扱うことが求められます。
ここで重要なのが「声門下圧(せいもんかあつ)」です。
声門下圧とは、声帯の下にかかる空気の圧力のこと。
響きのある声を出すためには、声帯に圧力がかかり強い振動を促すことが必要です。
息を扱う際、量を多くするのではなく圧を強くしていくことが、適切にのびやかな声を出すきっかけになります。
むしろ、息を吐きすぎてしまうと、声帯は上手く振動せず、「頑張っているのに上手く声が出ない」といった状態になります。
これを、「息漏れ」と言います。
「歌う時に肺活量が足りない・・・。」
と感じるとき、この「息漏れ」の状態になっている可能性が大きいです。
声門下圧が安定していると、
•ロングトーンが安定する
•高音が苦しくならない
•ビブラートが自然にかかる
•声量がコントロールできる
といったメリットがあります。
より基礎を知りたい方は、「発声基礎コース」へ!呼吸の主役は「横隔膜」
歌の呼吸で中心となるのは「横隔膜」です。
横隔膜は、肺の下にあるドーム状の筋肉。
吸うときに下がり、吐くときに戻ることで空気を動かします。
ここでよくある誤解が「腹式呼吸=お腹を膨らませること」だという考えです。
実際には、
✔ 横隔膜が下がる
✔ 内臓が押し下げられる
✔ 結果としてお腹が前に出る
という流れです。
つまりお腹は“結果”であり、“目的”ではありません。
横隔膜を自在にコントロールさせるために、お腹周りの筋肉の稼働が必要になっていくのです。

歌では「吐くコントロール」が9割
日常呼吸は「吸う」ことが中心ですが、
歌は「吐くコントロール」が中心になります。
ポイントは3つ。
➀吐きすぎない
➁止めすぎない
➂圧を一定に保つ
特に初心者の方は、
・吸いすぎる
・一気に吐いてしまう
・高音で全部使い切る
という状態になりがちです。
これは肺活量の問題ではなく、呼気コントロールの問題です。
実際に声を出しながら、自身の安定する力の塩梅を見つけていきましょう!
肺活量が多すぎる人の落とし穴
実は、肺活量が多い人ほど起こりやすい問題があります。
それは「息を使いすぎる」こと。
スポーツ経験者や体格の良い方に多いのですが、
・声が荒くなる
・すぐ喉が疲れる
・高音で押してしまう
という状態になりやすいです。
なぜなら、
空気量が多い=圧も強くなりやすい
からです。
声帯はとても繊細な筋肉なので、
強すぎる圧は逆効果になります。
歌に本当に必要な呼吸の仕組み
歌に必要なのは、次の2つのバランスです。
➀横隔膜のコントロール
➁声門閉鎖との連動
呼吸と発声は切り離せません。
いくら肺活量が多くても、声門閉鎖(声帯の閉じ具合)が弱ければ息漏れになります。
逆に閉鎖が強すぎると、圧がこもります。
「必要最低限の息を、最適な圧で送り続けること」
自身の声帯にあった息の使い方を知ることで、声の可能性を広げることができます!

呼吸の土台を作るトレーニング
➀4秒吸って8秒吐くコントロール練習
【やり方】
・鼻から4秒かけて吸う
・口から8秒かけて「スーーー」と一定で吐く
・音量を変えずに最後まで一定に
【ポイント】
・吸うときに肩を上げない
・吐くスピードを絶対に変えない
・お腹をへこませようとしない
これは「横隔膜の戻り」をコントロールする練習です。
まずはここが基礎になります。
➁声門下圧を安定させる練習
Sトレーニング(無声音コントロール)
・あくびのイメージで大きく吸う
・「スーッ」と歯の隙間から一定で吐く
・20秒キープを目標
【ポイント】
・音量を一定に
・途中で揺れない
・息を押し出さない
これが安定すると、ロングトーンが劇的に変わります。
➂腹圧サポート強化トレーニング
プランク呼吸
・プランク姿勢をとる
・そのまま浅く速く呼吸する
・30秒キープ
プランクと呼吸を同時に行うことで、体幹と呼吸筋が連動します。
歌は“腹筋を使う”というより、
「体幹で圧を支える」感覚です。
力みにも繋がりやすいので、過度なトレーニングに注意してください。
➃高音対策呼吸トレーニング
息を“止める感覚”を作る練習
・軽く、脱力しながら吸う
・2秒キープ(止める)
・そこからゆっくり吐く
※息が漏れないように、中心に集めるイメージで
息が漏れる=圧が逃げている状態です。
息を「止める」ができると、高音で息が漏れなくなります。
➄上級者向け:圧コントロール練習
ロングトーン強弱練習
「あーーー」で10秒伸ばす
途中で小さく → 大きく → 小さく
声量を変えても息のスピードを変えない。
これができると、プロレベルのコントロールになります。
歌に必要なのは“息の量”ではなく“息の圧”
声はどうやって出ているのでしょうか?
① 横隔膜が下がり、肺に空気が入る
② 吐くときに横隔膜が戻る
③ 空気が気管を通る
④ 声帯が振動する
声帯とは、声を出すための器官。
2枚のひだのような構造となっており、息が通ることで振動を始めます。
歌では、この振動を上手く扱うことが求められます。
ここで重要なのが「声門下圧(せいもんかあつ)」です。
声門下圧とは、声帯の下にかかる空気の圧力のこと。
響きのある声を出すためには、声帯に圧力がかかり強い振動を促すことが必要です。
息を扱う際、量を多くするのではなく圧を強くしていくことが、適切にのびやかな声を出すきっかけになります。
むしろ、息を吐きすぎてしまうと、声帯は上手く振動せず、「頑張っているのに上手く声が出ない」といった状態になります。
これを、「息漏れ」と言います。
「歌う時に肺活量が足りない・・・。」
と感じるとき、この「息漏れ」の状態になっている可能性が大きいです。
声門下圧が安定していると、
•ロングトーンが安定する
•高音が苦しくならない
•ビブラートが自然にかかる
•声量がコントロールできる
といったメリットがあります。
より高い声で歌いたい方は、「高音ボイトレコース」へ!よくある質問
呼吸トレーニングは毎日やるべきですか?
A.毎日短時間でOKです。
おすすめは
・4秒吸って8秒吐く
・Sトレーニング20秒
・ロングトーン10秒
合計5分程度でも効果があります。
子どもや女性は肺活量が少ないから不利?
A.不利ではありません。
体格差よりも、
呼吸筋と声帯のバランスが重要です。
小柄なプロシンガーも多数います。
息をたくさん吸えばロングトーンは伸びますか?
A.吸いすぎは逆効果になることもあります。
吸いすぎると圧が強くなり、
声が荒れたり揺れたりします。
「必要な分だけ吸う」ことがポイントです。

息をコントロールして、自由に歌おう!
肺活量とは「吸える・吐ける空気の総量」のこと。
しかし、歌において重要なのは——
✔ 量よりも圧
✔ 吸うよりも吐くコントロール
✔ 横隔膜の安定
✔ 声門下圧のバランス
です。
肺活量を増やすトレーニングよりも、
「ゆっくり一定で吐く練習」
「エッジボイスでの声帯確認」
「ロングトーンの安定練習」
の方が、実は歌には直結します。
もし今、
・息が続かない
・高音で苦しい
・ロングトーンが揺れる
という悩みがあるなら、
肺活量を疑う前に「呼吸の質」を見直してみましょう。
呼吸が変わると、声は確実に変わります。
好きな歌を自由に歌いたい方は、「ボーカルコース」へ!